夜の学校ってなんであんなに怖い話が似合うんでしょうね

おわかりいただけただろうか

夜の学校。

この響きだけで何だか背筋が凍るような感覚に襲われます。

夜の学校を舞台にした怖い話は枚挙にいとまが無く、あなた自身もいくつか聞いたことがあるはずです。

やれ、トイレにはお化けがいるだの、音楽室の肖像画の目が光るだの。

だいたいこうした怪奇現象が起こると言われているのが夜です。昼に怪奇現象が起きるなんて話はあまり聞きません。怪奇現象さんは夜型ですね。

後から考えれば大したことない話でも、当時はとても怖かった記憶があります。この恐怖って、どこから来るんでしょうね。

人の集まる場所

学校は人の集まる場所。

小学校や中学校だと、平日の昼は常に人でいっぱい。満員御礼です。

毎日学校に通い、昼間は学校にいるのが当たり前な生活をみんなが送っている訳です。

それが夕方を境に様変わり。

子供達は家に帰り、学校にいるのは残業に追われる先生のみ。彼らも仕事が終われば我先にと帰っていくことでしょう。

すると、昼間の喧騒とはうって変わって、全然人の気配が無い場所になります。

夜の学校の様子を知っている子供はほとんどいないでしょうし、先生だって毎日夜中までいる訳では無いでしょう。

みんなが知っている場所なのに、誰もその様子を知らない時間帯が存在する、というギャップがあるのです。

このギャップが恐怖を生む余地になるのかもしれません。

「きっと夜中にお化けたちが授業を受けているに違いない」

「ベートーベンの肖像画が飛び回って、他の肖像画に喧嘩を売ってるのかも」

なんていう、想像を生む余地がある訳です。

この想像が噂となって出歩くと、子供達の間で恐怖が伝播していきます。

噂の存在

とは厄介なもので、誰も実体を知らなくとも、まるで真実かのように伝わっていきます。

たとえそれが友達を怖がらせるための作り話であっても、誰も確かめようとしないから、噂も否定しようがないですし。だって確かめるのは怖いもの。

よしんば確かめたとしても、負けず嫌いな子だと、噂を否定されるのが嫌で、相手の確かめ方が良くない、なんて言ってしまうものです。

「いや、その条件ではお化けが出ない。夜中の4:44:44に鏡の前で、パンを尻に挟んで、右手の指を鼻の穴に入れ、左手でボクシングしながら『いのちをだいじに!』と叫ばないといけない」

なんていうRPGの隠しボスを出すかのような条件が付け加えられたりして、噂自体が消滅することもないんですよね。

さらには、同じ話だと聞く側も飽きてくるので、噂を話したい人は尾ひれはひれを付けて更にバージョンアップさせて話したり。「知ってるよー」なんてリアクションが返ってくるのが悔しいからか、まだ誰も知らない、つまりオリジナルの話を盛って伝えたりもします。

こうして噂自体が成長してゆき、下級生に伝わって更に変遷して……ずっと語り継がれていくのです。

土地の来歴も拍車をかける

学校は住宅地の真ん中にあることが多いのですが、その土地に学校が建つ前はどんな土地だったのでしょうか。

本当かどうかは別として、今学校が建っている土地は昔墓地だった、なんてものはよく聞く話です。

こうした情報も、恐怖に拍車をかけていきます。

子供達が自分で学校の土地の来歴を調べるのはまだ難しいでしょうから、大人達の話を聞いてそれを信じることが多いでしょう。

大人が冗談で「あの学校の所、昔お墓があったんだよ」なんて言おうものなら一気に噂として広がります。

ベートーベンの肖像画が飛び回るのも昔お墓があったから、と関連付けされ、なんとなく説得力があるように伝わり、噂が強化されるのです。

冷静に考えると、ベートーベンはドイツの人なんだから、日本のお墓は関係ないはずなんですけどね。

夜の人口密度の小ささも

夕方や夜、学校に忘れ物を取りに行ったことのある人なら分かってもらえると思いますが、その時間に学校内にいる人間の数に対して、学校の建物ってとても広いんですよね。

昼間は人間でひしめき合っているから狭く感じますが、夜、特に自分しかいない時に学校に行くと、がらーんとしていて広く感じます。

それでいて照明の数も多くないし、死角になる場所が多いしで、それはそれは恐怖心をドライブさせていくのです。

「あの影から何か飛び出してきたらどうしよう」とか「理科室の人体模型が歩いていたら嫌だな」とか。

人間とは不思議なもので、考えないようにすればするほど、嫌な想像が捗るんですよね。

特に夜の学校なんて、みんなの想像力が生み出したお化け達が歩き回っているのですから、もし行き遭ったら……なんて考えただけで震えてきます。

自分の身に危険が降りかかるかもしれない、という生物学的な恐怖が生まれてくるのです。

もし見つかったら逃げなきゃいけないけど、逃げるには広すぎるのが夜の学校。これまた恐怖を煽ります。

恐怖を生むための肥沃な土壌

こうして考えてみると、学校は恐怖を生むための条件が豊富です。

人が集まる場所なのに、誰もいない時間がある。

人が集まっている時にはが飛び交う。

学校の来歴が噂を強固なものにする。

死角が多く、逃げるには広すぎる場所。

子供達の想像力を刺激して恐怖を生み出すにはとてもいい環境ですね。

これを小説に盛り込むと

小説の観点でこれらを生かすならば、小・中学生を主人公にしたプチホラー小説とか、先生を主人公にしたガチホラー小説とかがいいかな。

学校そのものを舞台にして映えるのは彼らだと思います。

特に昼間は人であふれていて、安全な場所であることを強調した上で、夜の恐怖を浮き彫りにするギャップを使いたいところ。

主人公に恐怖心を植え付けるのは噂の存在です。子供が主人公なら、友達から聞く噂を素直に信じるでしょうし、若手の先生で子供達との距離が離れていない人なら、子供から噂を聞かされた時に「そんなの嘘でしょ! ……嘘だよね?」なんて半信半疑にさせるとか。

噂を解決した後も、完全解決じゃなくて実は続いていて、脈々と受け継がれていくよーというのもホラー小説の鉄板ですね。

高校生とか大学生だと、ここまで恐怖を感じることはなさそうです。特に夜の大学なんて、卒論の締め切りに追われながら、泊まり込んで実験して論文をまとめていた私のような学生もいますし、夜遅くでも誰かしらいるんですよね。そうすると恐怖も薄らいでしまいます。

高校生とか大学生を主人公にするなら、学校以外の場所から何かを持ち込んでしまう形がベターでしょうか。何人かで心霊スポットに行ったらついてきちゃった、とか。

いずれにせよ、彼らの場合は学校を舞台装置にするにしても依存度が下がります。

やはり書きやすいのは若手の先生が主人公の話かな。大人の視点を盛り込めるのもでかいですし。

大人ならではの分析力を生かして、学校の土地の来歴を調べたら噂と繋がっちゃった!! みたいな感じに進めていけばスムーズに話を転がせそうです。

うんうん、夜の学校について考えていけば、なんだか小説も書けそうな気がしてきました。

あなたもご自分の過去を思い出して、夜の学校に対するイメージを洗い出しつつ、「こんな噂あったなー」を出発点に小説を書いてみてくださいな。