怖い話や噂のような短い話にもプロットが存在している!

噂話とプロット

怖い話とか怖い噂って、なんであんなに広まりやすいんでしょうね。

特に学校なんかではあっという間に広まりますし。

夜の学校ってなんであんなに怖い話が似合うんでしょうね
夜の学校、といえば怖い話の宝庫。昼間はあんなに人がいるのに、夜になると誰もいなくなる、というギャップは子供達の想像力を刺激し、様々な噂話を生み出します。これらを踏まえ、小説にどう生かせるかを考えます。

上の記事でも少し触れましたが、学校って本当に怖い話が似合います。

その一端を担うのが、生徒たち、つまりたくさんの人の存在です。

人がいればいるだけ、話は広がっていきやすいですものね。

その噂が伝わっていく中で見えるのが、プロットの存在。これは小説を書く人間としては見逃せません。

噂にはプロットがある!

しょっぱなから今回の主題ですが、噂話にはプロットがあるんです。

噂話全体に共通するプロットという意味ではなく、話す人が噂を広める上で使うという意味でのプロットです。

そして、噂話が伝わる時には、このプロットが受け渡されていきます。

よくある怖い話を霊に挙げてみましょう。語るのはのべ子さん、聞くのはかく子さんです。

のべ子「ねぇ、かく子ちゃん、あの噂もう聞いた?」

かく子「えっ、なになに?」

のべ子隣のクラスの子が話してたらしいんだけど、学校の3階にある女子トイレに、花子さんが出るんだって」

かく子「花子さん?」

のべ子「そう。夜中の3時33分にトイレに入ると、奥から3番目の個室が閉まってるんだって。その扉を3回ノックするとね……」

かく子「うん……」

のべ子「花子さんが出てきて、呪われちゃうんだって!」

かく子「怖っ! 呪われるとどうなるの?」

のべ子「隣のクラスの子が言ってたのは、毎朝必ず頭に鳥のフンが落ちてくるみたい」

かく子「うわっ最悪! 花子さんの呪い怖っ!」

のべ子「それでね、その呪いを解くには、同じ時間に花子さんのトイレに行って、額を床につけて土下座して、『すんませんでしたーっ!!』って全力で謝らないといけないんだって」

かく子「うわー……呪いを解くのもキツイね。……でも毎朝鳥のフンをかぶるよりマシかぁ」

適当に話を作りましたが、噂話の伝わり方ってこんな感じ。ここで注目したいのは、この話にもプロットがあったこと。重要な点を並べると以下のようになります。

  1. 出処不明の話
  2. 出てくるお化けの名前
  3. お化けに会う方法
  4. お化けに会った時のイベント
  5. お化けに会った時の対処法

1.の出処不明の話に関しては、上の会話の「隣のクラスの子が話してた」という部分が該当します。

余談ですが、噂話でこうした語句が挟まれるのは、責任の所在を曖昧にする目的があります。怖い話を実際に確かめに行く人はほとんどいないでしょうが、万が一確かめられた時に、責められるのを防ぐことができます。だって私が言ったんじゃないんだもの! と。

2.の出てくるお化けの名前ですが、上の会話の「花子さん」の部分です。噂話の主題とも言えます。これがないと何の話か分かりにくいですよね。恐怖を感じる対象を明確化する効果もあります。

3.お化けに会う方法も、恐怖をかき立てるための重要な情報。上の会話の「夜中の3時33分にトイレに入る」が該当します。お化けに会う方法がなければ、何だかぼや〜っとした話になり、恐怖も感じにくくなります。

4.のお化けに会った時のイベントというのは、物理的ダメージだったり、精神的ダメージだったりと、何かしらの不利益を被る部分です。上の会話の「呪われちゃう」が該当します。自分の身に何か降りかかるとなると、話の受け手もしっかりと話を聞くようになりますよね。

5.のお化けに会った時の対処法は「その呪いを解くには」の辺り。対処法の細部は変わるかもしれませんが、何らかの対処法は盛り込まれています。

つまり、「誰かが話してたんだけど、花子さんというお化けが夜中のトイレに出て、あることをすると呪われる、その対処法はこれ」というのがこの噂のプロットです。

この点さえ押さえていれば、噂の細かい話、例えば呪いの内容が変わっていても、噂を伝えることができます。

噂は派生する

上で霊に挙げた話のプロットをおさらい。

  1. 出処不明の話
  2. 出てくるお化けの名前
  3. お化けに会う方法
  4. お化けに会った時のイベント
  5. お化けに会った時の対処法

これをベースに、今度は噂を聞いたかく子さんがとう子さんに噂を広めるケース。

かく子「あ、とう子ちゃん、おはよー」

とう子「おはよ〜かく子ちゃん。今日も早いねぇ」

かく子「うん、私朝は強いから……じゃなくて、とう子ちゃんもあの噂聞いた?」

とう子「噂? 何の話?」

かく子「知らないっぽいね。これはのべ子ちゃんが隣のクラスの子から聞いたらしいんだけど、学校の3階のトイレに、花子さんが出るんだって」

とう子「花子ちゃん?」

かく子「そう、花子さん。夜中の3時33分にトイレに入ると、奥から3番目の個室が閉まってるんだって」

とう子「花子ちゃん夜中までトイレにいたんだ。相当お腹痛かったのねぇ」

かく子「いやいや、花子さんお化けだから。それでね、その扉を3回ノックすると、花子さんが出てきて呪われちゃうんだって」

とう子「トイレの邪魔されたら、そりゃ怒るよね〜。呪われるとどうなるの?」

かく子「もう、そうじゃなくて……(あれっ何だっけ)……そうそう、毎朝犬のフンを踏んじゃうようになるみたい!」

とう子「地味に嫌な呪いだね……」

かく子「その呪いを解くには……(えーっと、確か)……同じ時間に花子さんのトイレに行って、土下座しながら30秒くらい謝らないといけないんだって」

とう子「トイレの床で土下座……犬のフンよりはマシかなぁ」

多分こんな感じに、のべ子さんの話した内容とはズレが生じていきます。元々の話の受け手であるかく子さんは、のべ子さんの話を一字一句覚えているなんてことはないでしょうから、重要なポイント、つまりプロットをベースに似たような話を作り、噂として伝えていきます。

ここが噂の面白く、そして厄介なところで、プロットが合っていれば同じ噂として伝わっていくけれども、細部は変化していくのです。

噂は盛られる

噂の変化の形として、細部の装飾が過剰になっていくことがあります。これを「盛られる」と表現しましたが、盛られる原因は大きく分けて2つ。

記憶違い、または承認欲求によるものです。

記憶違いの方は、上のかく子さんのケースです。(あれっ何だっけ)とか、(えーっと、確か)のあたり。

細かいことまで思い出せないけど、話し始めたから途中で止めるのも変だし……と思ってプロットに沿って話を作りながら話していけば、自然と細部は異なっていきます。

意図せずして、元の話より大きくなっていることもありますから、偶発的なケースですね。

一方の承認欲求によるものは、意図的に話が大きくなっていきます。

「わーすごい!」とか「詳しく知ってるね!」といった賞賛の言葉を目当てに、もりもり話を付け加えていきます。

例えば、上の話で言えば、呪いの内容が「毎朝鳩のフンが頭にヒットする」→「毎朝犬のフンを踏む」→「毎朝タンスの角に小指をぶつける」→「毎日必ず1教科分の教科書を忘れる」のようにエスカレートしていくことが考えられます。

ポイントは他の人が知らないことを知っている、という点をアピールすることで、そのために他の人が知らない話=自分が作った話を伝えるのです。

盛って盛って伝わると、段々と別の話のようになっていきます。同じプロットで似たような盛り方だと同じような話、という印象ですが、盛り盛りなら別の話にも感じられます。

盛る過程でプロット自体も多少変化するでしょうし、そうすると更に別の話に成長していきますね。

小説を書く人はどう捉えればいいか

小説を書く人間の立場から今回の話を見ると、ポイントは大きく2つ。

噂話のような短い話でもプロットを骨格に話が作られていること、プロットが同じ(ような)ものでも話の盛り方によって別の話のようになること。

前者を見れば、プロットの存在がいかに大事かというのが分かります。小説を書きたい人向けに書いているブログなので、プロットって何ぞ? という話は一切してませんでしたが、それはまたの機会に。いやもうみんな知ってるんじゃね? ぐらいの感覚でした。すんません(トイレの床で土下座)

※追記

プロットについて書きました。

お話の設計図・プロットを作って小説を書いてみよう
初心者の方向けに、プロットとは何か、作るメリット、そして作り方の一例(Why-Because法)をお伝えしています。初心者向けとは言いつつも、社会人で趣味として小説を書きたいあなたに向けた説明なので、お仕事をしている時に聞くような言葉も使っています。

後者は特に大事で、小説なんて承認欲求が顕現した存在みたいなものですから、いかに独自の目線で話を盛れるかが勝負です。

前の節ではネガティヴな文脈で承認欲求を取り上げましたが、物書きたるもの、承認欲求に素直であるべきです。小説を読んでもらえるだけで承認欲求が満たされますし。

でもって、同じプロットでも盛り方によって別の話になる、というのは小説を書くトレーニングのヒントとなります。映画を観て、そのプロットを抜き出したら、それを抽象化して自分なりの小説に置き換える、といったトレーニングが可能に。

試しにアルマゲドンだったり、君の名はだったりを観て、プロットを抜き出してみるのをおすすめ。

例えば、隕石の落下から人類を助ける、というキーポイントに対して、次元転送装置を作って未来の地球に隕石を送る話にしてもいいと思います。でもって、今まさに落ちてきている隕石は過去の人類がこの現代に転送したものだった、今も昔も変わらないよね、とかにすれば、ナンタラ文明の遺跡に書かれていた絵はこれを表していたんだ!! みたいに伏線とかも作りやすいですし。

今回伝えたかった事

小説だけでなく噂話にもプロットがあること、プロットが同じでも細部の作り込みによっては別の話になりうること。この2つを伝えたかったのが今回の記事でした。

前回学校の怖い話について考えていたので、その発展で怖い噂の広まり方について考えてみたらプロットの存在が見えてきたのでした。

プロット単体についてもそのうちまとめていきたいなぁ。