「テーマだって?」あなたの小説を深めるもの【初心者向け】

小説にはテーマを

小説に欠かせないものとは何でしょう?

小説を書くための紙とペン? それとも文章を伝える文字? いやいや、プロット世界観では?

いえ、それらも重要であることに変わりはありませんが、一番大事なものはこれ。

テーマ。小説の中核をなす主題です。

多くの小説はテーマを中心に物語が展開していきます。テーマを中心に、とはどういうことでしょうか?

例えばテーマが「家族愛」であるとします。この場合、物語内の出来事は家族愛を象徴する出来事であるはずです。

テーマをとして小説を書けば、全体を通して一貫性のある、読者が混乱しない小説になります。

この記事を読み終わる頃にはきっと、あなたの小説にもテーマが盛り込まれ、一貫性があり、ブレがなく深い小説を書き始められるようになります。早いうちからテーマを意識して小説を書けるようになると、レベルアップも早くなります。

テーマは小説の中心

テーマ」とは様々な場面で使われる言葉です。今回の議論のテーマは、とか、この音楽作品のテーマは、とか。小説以外の部分でもよく耳にしますよね。

議論の場合であれば、テーマとして挙げられた事柄を中心に意見が飛び交います。音楽作品の場合なら、その作品の中心となる音の並びやフレーズをテーマと呼んでいます。

では小説の場合のテーマはどのように考えられるでしょうか。

やはり他の用法と同じように、その作品の中心となる事柄であると言えます。〇〇に関する小説、の〇〇に入る事柄がテーマです。

テーマはであったり、恐怖であったり、名誉の獲得であったりと、人間の根源的欲求に結びついた事柄であることが多いです。こうした事柄は、読者も共通して持っているはずの欲求であり、共感できるものです。

テーマの例

上で愛や恐怖、名誉の獲得を例に挙げましたが、必ずしも「愛」という大きな粒度で扱われるのではなくて、より細分化されたレベルである「家族愛」、「恋愛」、「ペットとの絆」といった形で盛り込まれることが多いです。

「恐怖」であれば、「生命の危機」とか「霊的な恐怖」、「社会的な立場を失う恐怖」などでしょうか。

「名誉の獲得」は「昇進」、「名誉の回復」など。

具体的に作品名を挙げるなら、『ALWAYS 三丁目の夕日』や『アルマゲドン』は家族愛、『リング』や『呪怨』は霊的な恐怖、『ショーシャンクの空に』は名誉の回復がテーマになっています。

……小説がテーマのブログなのに映画を例に挙げるのもどうかと思いましたが、分かりやすさ優先ということでご容赦を。ほら、映画から学べることもいっぱいあるし、ね?

せっかくなので自分でも例を考えてみたいと思います。恐怖を細分化して、「戦いの悲惨さ」をテーマにしてみましょうか。

上記のテーマで架空の世界を舞台に群像劇を書くとして、まずは戦地ど真ん中で敵と戦っている兵士を主人公にして話を進めましょう。


彼は前線に送られ、馬に乗って戦っています。昨晩、共に生きて帰ることを誓った仲間は敵に討ち取られました。30分後に生きていられるかも分からない状況で、命を奪われる恐怖と戦いながら必死に生き延びようともがきます。

次は戦地付近にある村にいる青年です。戦地で物資を補給しようとしている敵国の軍が村を占拠してしまいました。彼らに刃向かった村人は返り討ちにされ、青年の父親もその一人でした。彼の父親が敵国の兵士に挑み掛かる前に、「お前は何としても生き延びろ」と言い遺したことから、青年は屈辱を耐え、家や食料を失いながらも残った村人達と共に国の首都を目指します。青年はそこで兵士となり、敵国の人間を根絶やしにすることを決意します。この村は、最初に出てきた兵士から見ると、敵国の領土にある村でした。

時間は最初の兵士が子供だった頃に戻ります。彼が子供の頃、彼の住んでいた村は敵国の侵攻に遭い、略奪の対象となってしまいました。彼の母親が何とか彼を逃したものの、焼かれる村は彼の目に焼きついていました。時間は流れ、彼が兵士となった今、彼のいる部隊は敵国の村から物資を徴発していました。かつて自分が背負った悲しみを他の人に背負わせてしまっていることに葛藤を抱きます。


……とこんな感じで話が進んでいくイメージです。登場する人物は戦いによってことごとく悲惨な状況に陥り、それぞれ葛藤を抱きます。その中心にある事柄が「戦いの悲惨さ」というテーマであり、物語はこのテーマに沿って進んでいくのです。

テーマとメッセージ

小説の中にテーマがあるとき、ただそれがあるだけでなく、著者はテーマを通して発したいメッセージがあるはずです。

メッセージは、その小説で何を言いたいのか、小説の中のwhatの部分です。

例えば「家族愛」がテーマの場合、「家族愛」そのものは題材、つまり語るための材料あって、「家族を大事にしようね」とか、「家族はお互いを思いやりつつも、適度な距離感でいるのがいいよね」とか、何らかのメッセージがあるはずなのです。

こうしたメッセージは、テーマと結びついたものになります。

「家族との絆」をテーマにしながら、「やっぱりお化けは怖いよね」みたいなメッセージだったら意味が分からないし、読者からしたら時間を返して!! ってなっちゃいます。

実際、テーマとメッセージを切り離して考えることは難しく、何か言いたいことがあるから、それを言うための題材はこれ、というような決め方が多いように思います。

逆に、この題材を扱いたい、この題材から何が言えるかな、なんて決め方もアリですが、ここでもやはり結びつきが見られます。

テーマとコンセプト

メッセージがwhatなら、コンセプトはどうやってそのメッセージを伝えるかのhowの部分です。

テーマとかコンセプトというと似たような使い方をされている場合もあるのですが、コンセプトはテーマを通してどのようにメッセージを伝えるか、といった意味合いが強いように思います。

ひとつのテーマをとって見ても、そのメッセージの伝え方は様々です。上で挙げた家族愛なら、『ALWAYS 三丁目の夕日』では昭和の世界観で、血の繋がっていない家族の絆と血の繋がっている家族の絆の対比を入れ、「物がなくてもみんなお互いを思い遣って心は豊かだったね」というメッセージを発しています。

『アルマゲドン』の場合は、父親と、父親を疎ましく思う娘との間の葛藤や、父親が地球に迫る隕石を爆破して軌道を変えるために宇宙に旅立つ姿を描き、「自分の命を犠牲にして愛する家族を守るのは高潔な精神だ」というメッセージを発しています。

メッセージの細部は異なりますが、どちらも家族を思い遣るのはいいよね、というメッセージになっています。似ているメッセージを伝えるのに、舞台設定やら描き方まで、だいぶ異なっていますよね。このメッセージを伝えるための手段がコンセプトです。

テーマやメッセージそのものは使い古されたものであっても、コンセプトが違えば独自性が出てきます。テーマをどういった方向から描くのかによって、別物になります。

コンセプトはテーマに切り口を与えたもの、というこちらの方の考え方が非常に勉強になりました。

http://d.hatena.ne.jp/shi3z/20111112/1321057463

テーマは複数あってもいい

ここまでの話の流れでは、ひとつの小説にテーマはひとつ、のような語り方でしたが、必ずしもそうする必要はありません。

恐怖に追われるホラーなお話の中で、子供を守ろうとする家族愛があってもいいのです。恐怖という題材を扱いながら、家族愛に関するメッセージを発することもできます。

あまりに乖離したテーマ同士では合体事故を起こしますが、ある程度関連性のあるテーマなら複合的に扱うことができます。上の例では、愛情と恐怖、どちらも人間が持つ感覚ですから、読者に共感してもらうことが可能です。

ただ、複合的なテーマも可能と言いましたが、やはりメインテーマは決めておくべきです。ある部分ではテーマAの話、ある部分ではテーマBの話、どちらも大事なのよーとしてしまうと軸がぶれるので、根底にあるテーマはひとつにしておくのが良いでしょう。

そう考えると、副次的なテーマは切り口のようにも考えられますね。上の例は、恐怖という切り口から家族愛を描く、という形になりそうです。

メインのテーマを決めるということは、メインのメッセージも1つに絞るとブレが無くなります。いくつかのメッセージを発することがあっても、その中で「これだけは!!」というものがあるはず。メインのメッセージを考えることは、以前の記事で書いたプロットの大黒柱にも繋がっていきます。

お話の設計図・プロットを作って小説を書いてみよう
初心者の方向けに、プロットとは何か、作るメリット、そして作り方の一例(Why-Because法)をお伝えしています。初心者向けとは言いつつも、社会人で趣味として小説を書きたいあなたに向けた説明なので、お仕事をしている時に聞くような言葉も使っています。

全体の足並みが揃う

テーマを決めるというのは、全体の方針を決めるのと同じことですから、これに沿って小説を書いていくことで、全体として一貫性のある小説になります。

ここでの一貫性とは、主人公の考え方が一貫して変わらないという意味ではなく、話の流れが自然になるという意味です。

お化けに追われる主人公が、急にハワイに飛び立ってのほほんと観光して、キラウエア火山について熱く語って終わり、みたいな小説は一貫性が無い例です。読者からすると「ん? これまでそんな話してたっけ……? なんでいきなりハワイ?」みたいな気持ちになります。

恐怖がテーマにあるなら、一貫して恐怖に関する事柄を中心に述べるべきで、上の例ではハワイ観光の描写のあと、お化けに捕まった主人公が脳だけの存在になって見ていた幻でした、みたいに持っていかないといけません。

ここまでやれば、「あぁ、やっぱりこのお化けからは逃げることができないんだ」という読後感にもなりますからね。読後感に残ったものがテーマと一致していたら、その小説は成功した、と言ってもいいでしょう。

まとめ

小説に欠かせないテーマについて初心者向けにメリットや概要をお伝えしました。初心者向けとは言いつつも、このブログの対象読者は社会人を想定しているので、多少難しい言葉も使っています。

テーマがあると小説に一貫性が出て、全体としてどういう物語なのか掴みやすくなるため、読者のためにもテーマを考えておくと小説のレベルが上がります。

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