小説を書くなら一度は取り入れてみたい黄昏時。
使われ過ぎて、うっかりすると陳腐なものになってしまう可能性もありますが、それでも黄昏時のミステリアスでどこか胸が締め付けられるような雰囲気を描けるようになっておくのは損ではありません。
実は上の記事でも黄昏時について触れていましたが、今回は学校に限らず、夕暮れ時のあの雰囲気について思うところを書いていきます。
黄昏時(たそがれどき)ってなに?
黄昏時(たそがれどき)について語る前に、そもそも黄昏時ってなに? という話を。
黄昏時とは、夕暮れ時、日没直後の空に太陽の赤みが残る頃を指します。この時間帯になると、目の前にいる人の顔もよく見えませんから、「誰そ彼(たそかれ: そこに居るのはだれだい?)」と聞かないといけない時間だったのが黄昏時の由来。
黄は太陽の色、昏は暗くなるという意味ですが、漢字の読みから「おうこん」とは言わずに元々の「たそかれ」を読みに当てています。
黄昏時の空の色を見れば、夕焼けの赤と夜の紫が入り混じる素敵なグラデーションが見られます。この昼と夜が入り混じる、というのが重要で、電気のない江戸時代なんかは暗くなってくると石につまづいて転んだり、山道で足を踏み外したりする事故が起こりやすくなったみたい。
こうした事故が起こりやすい時間なので、大禍時(おおまがとき)と呼ばれることも。黄昏時と夜との間に大禍時がある、なんて話もあります。(諸説あります)
完全に夜になってしまったら諦めて出歩かないけど、まだちょっと陽の光があるからいけそう! という意識から油断が生まれます。この油断は「魔が差す」と言い換えることができます。
魔に逢いやすい時間、という言葉遊びから、逢魔時(おうまがとき)と呼ばれることもあります。夜はお化けの時間であり、そのお化けたちが動き始めるのが、昼と夜が入り混じる時間帯、つまり黄昏時なのです。
陽の光がだんだんと無くなっていき、なにか人ならざるものに逢いそうな、そんな神秘的な時間が黄昏時です。
写真で雰囲気を掴む
黄昏時のイメージを掴むには、黄昏時に外に出ればバッチリです。
今この記事を読んでいる時間が黄昏時でなければ、下の写真でイメージを膨らませてくださいな。
都市の黄昏
海と女性
黄昏の海辺
写真界では黄昏時をマジックアワーと呼び、幻想的な写真が撮れる時間として人気を博しています。
上の写真を見ていても、なんだか胸が締め付けられるような気がしませんか?
そんな不思議な魅力がある時間帯なのです。
黄昏時のイメージ
黄昏時は上の写真のように、幻想的で神秘的な時間です。
何か不思議なことが起こりそうな時間として小説に組み込めば、幻想的なイメージを出すことができるでしょう。
例えば、毎日の激務で人生に迷った若手サラリーマンが、会社からの帰り道に、日の沈まない黄昏の街に迷い込んで、その中で子供のころからの夢を思い出す、なんてストーリーができそうですね。
大禍時や逢魔時のように、魔とか恐怖を先行させれば、不吉なことが起きる象徴としての黄昏が生きてきます。
例えば、地質学者が地図に載っていない無知に辿り着いた時、日は既に沈み、太陽の残滓が辺りをか細く照らすのみであった、なんて始めれば恐怖を煽ることもできます。その晩からコナンが活躍する事件が起これば尚よしです。謎の村の風土病で、夜になるとゾンビとか屍人が現れるとかでも可。
時間帯に着目すれば、黄昏時は一日の中で後半、これから一日が終わり始めるという時間です。人によっては、一日を振り返っている時間ですね。
これを人生になぞらえると、だいたい初老くらいの年齢になるでしょうか。そのような人が人生を振り返り、残りの人生をどう生きるかの決意を得る小説もアリです。振り返りは過去に思いを馳せる行為ですから、ノスタルジーを感じさせるような内容と親和性がありそうです。
黄昏時は一度舞台にしてみよう
黄昏時から関連するワードを拾うだけでも物語が作れます。短編だと色々なパターンが試せておすすめ。
みんなが毎日黄昏時を通っているのですから、共感できるポイントも多いのがいいですね。