以前、「人間関係で嫌な事があったら、小説のネタにしてしまおう!」なんてことを書きましたが、実際にどのように小説に落とし込めるかを考えてみます。
日常で出会った嫌な人を元ネタとして小説を書くのはネガティヴなことこの上ないのですが、直接怒りをぶつけて人間関係を壊すよりはいくらか落ち着いた対応です。
もちろん固有名詞を出したり、個人が特定できるように書いてしまうのは愚の骨頂なので、元ネタの人物をうまく抽象化し、小説のネタとして使えるように分析してみたいと思います。というか人から聞いた話(グチ)がベースなので、私が直接関わった訳ではないんです。本当です! 信じてください!
今回は、タイトルにもあるように、「喋るたびに人を傷つける人」の性格や心理的傾向を分析し、小説に生かす方法を考えます。
念のために申し上げれば、私もこの分析にあたっては特定の個人を題材にしている訳ではなく、イラっとしたことをまとめて抽象化した上で、小説に活かせる形で抜き出しています。
大事なのは傾向を掴んで、再利用できる形にすることです。冷静に分析して相手を見つめることで、相手の内面を思い遣ることができますからね。そうすると日常でも余裕を持って対応することができるはずです。
なぜ喋るたびに人を傷つけるのか
今回のテーマは「喋るたびに他人を傷つける人」です。
例えばテレビを見ていて、スポーツ選手が頑張っている姿を見て、「あいつはここがダメ」とか「なんでそんなことするんだ」なんて言う人がいます。居酒屋でスポーツ中継なんかが流れてると、酔っ払ったおじさま方がよく管を巻いている気がします。
これくらいの文句なら「まぁそんな風に言いたい時もあるよね」と流せますが、事あるごとにダメ出ししてくる人がいるんです。
「お前はこれだからダメなんだ」とか、「なんでそんな事したの? なんで? ねぇ?」と責めて来る人。色々な人の話を聞いていると、上司にこのような言い方をされた人も多いようです。
「え〜それは良く無いんじゃないの〜?」みたいな言い方もありますね。これも茶化しているようで傷つけています。
褒め方にも特徴がある
このタイプの人の褒め方によくあるのが、「あいつはここがダメだけど、君は出来ているね」という褒め方。わざわざ誰かを下げるやり方です。
これ、言われても褒められている気がしないんですよね。他人との比較、しかも比較相手を下げた上で「君は出来てる」なんて言われても、「わざわざハードルを下げないと褒められないの? というか関係ないあの人をなんで傷つけたの?」なんて気になってしまったり。下手すると、名前が出てきた人との関係も悪化するし、いいことが全く無いんです。
「お前仕事遅いんだよなぁ……せっかく品質はいいんだから、スピードも上げてこうぜ」といったように、言われる側の範囲内で完結する比較だったらまだいいんですよ。
他人と比較するなら比較するで、「あの人もこの業務が得意で早いんだけど、君も早くなってきてるよね」みたいにいい部分と比較するなら、名前が挙がった人も気持ちよくいられるし、言われた側も「やったぁ!!」って素直に喜べるし。
でもこのタイプは、そんな褒め方はしないのよね。
悪いところが目につきやすい
いい部分の比較をするのではなく、悪い部分を比較対象に持ってきてしまうのは、おそらく悪いところが目につきやすい人なんだと思います。
なぜ悪いところが目につきやすいのか?
それは完璧主義だからではないかと考えています。そしておそらく自分の能力に自信を持っています。
自信があり、「こうあるべきだ」という理想の姿がある。これを他人にも適用しようとしてしまうから、「本来こうあるべきなのに出来ていない」という点に目が行き、つい傷つけてしまうのではないかと思います。ざっくり言えば減点方式でしょうか。
目につくというのは意識しているということですから、常に意識している事に言及してしまうのも無理はないのかも。
心は繊細なんだと思う
完璧主義だと、心は繊細なんじゃないかとも思います。どこか傷のある状態を許容できないで、気になってしまったり。
それでいて、自分にも弱点があることを分かってしまっているのかも知れません。だからこそ、他人にそれを指摘される前に、先制攻撃しちゃいたいのかも。
ざっくり言ってしまえば、受け入れる度量があまり大きくないとも言えます。攻撃される恐怖を抱えるのが嫌だから、先に言ってしまったり。
こんな登場人物に向いている
ここまでの心理的傾向をまとめると、以下の通り。
- 悪いところが目につきやすい
- 完璧主義
- 能力は高い(と思っている)
- 心が繊細
これを活かせる登場人物となると、主人公に敵対するちょっと上のレベルの存在、目の上のたんこぶのような登場人物だと動かしやすいかもしれません。
多くの人がイメージできる上司やお局様ならバッチリはまると思います。今のままでは勝てない相手だと、主人公のフラストレーションに共感できそうですし、主人公が成長して認められた時のカタルシスにも繋がります。
学校ものの小説ならあまり尊敬されていない先生か、いじめっ子グループの一員あたり。病院ものならライバルを蹴落としてのし上がった偉い人とか。
主人公が嫌われ者サイドなら、その仲間として動かしやすそうですね。嫌な言い方をしながらも主人公に協力してくれる、といった形なら、特徴のひとつとして受け入れられそうです。
いっそ主人公にしても面白いかもしれません。
他人に優しくしすぎて仕事を背負いこみ、体を壊してそのまま亡くなった父を見た幼い頃の主人公。他人に使われることを忌避し、他人を蹴落として上に立つことを目指したものの、東大卒業後に入った大企業で、お互いの悪い点を上司にチクリ、足を引っ張り合うライバルとの争いに破れ、疲弊して体を壊してしまいました。
会社をやめた後、若さで体調を取り戻したものの、もはや大企業に戻る気力のない彼は、ハローワークで目を瞑って適当に選んだ会社で働く事に。そこで出会ったのは、かつての父のように人の良いところしか見ない社長。
最初はその性格に呆れて、バカにすらしていた主人公でしたが、次第に社長の強さと度量を知り、主人公の父が人の良いところだけを見ようとした真意を知ります。主人公は他人の良いところを認めるようになり、社長と共に会社を大きくしたのでした。
やがてかつて辞めた会社と取引するようになり、最初はライバルが妨害を行うものの、ライバルの隠れた良さを見抜き、共に手を取り合うようになりました。
みたいな感じの成長物語を作ると、今嫌なことを言う人も、こういうきっかけで成長するのかもなぁと優しくなれそうです。
分析すると少し余裕が持てる
嫌なことを言ってくる人がいると、あまり関わりたくない気持ちが真っ先に出てきますが、こうして分析してみると、少し相手のことを思い遣れる気がします。
嫌なことを言ってしまう背景を想像すると、もしかしたらこの人もこんな面に恐怖を持っているのかも、と感情面から少し共感できることもあるかもしれませんし。
言われた瞬間は「なんだとー!」と思いますが、分析の過程を入れれば感情を横に置いて冷静に見つめることもできます。
自分の怒りも抑えつつ、相手にも少し優しくなれる。小説のネタにするのはアンガーマネジメントにも使えるかも。小説のネタにするのって、ただ相手を悪く書くだけではないですもんね。相手の内面を見ようとする姿勢が重要なのです。
よし、綺麗にまとまった。