月の地名、ご存知ですか?
「は……? 地名?」
って人が大半だと思いますが、月にも地名があるんです。
JAXAが公開している月面探査プロジェクト『SELENE(セレーネ)』の観測データを見ると、地名が書かれているんです。
地名と言ってもメインは海の名前なんですけど、「嵐の大洋」とか「神酒の海」、「虹の入江」など、SF小説にそのまま出てきそうな名前が付けられています。
「いやいや東鶴ちゃん、嘘言っちゃあかんぜよ」という人は是非JAXAの「かぐやが見た月の地形」をご参照ください。マジで厨二っぽい名前が付いてるから。
地名がキュンキュンする
実は最近JAXAの入り口にある展示室に行ったのですが、展示されていた月の地名を見て衝撃を受けました。
「厨二心に溢れている!!」
と。上のリンクを見てもらえば分かると思いますが、先に挙げた名前の他に「静かの海」とか「危機の海」なんていう厨二心溢れる名前が付いてます。
「月に海なんてあるの?」
と思う方も多いと思うけど、地球から見たときに黒く見える部分が月の海。実際には地球のように水がある訳じゃないのだけれど、もともと月を観測していたケプラーさんが「うおおお月にも海あるじゃん!! すっげー!!」と信じていたのが始まり。
ケプラーは「惑星は太陽を焦点のひとつとする楕円軌道を描く」という法則を見つけ出した超すごい物理学者。私も大学の時に、惑星の軌道計算のシミュレーションをする際、彼の見出した「ケプラーの法則」を使いました。
そんなケプラーさんに習って、1651年、イタリアの2人の物理学者が月の地形に、水に関する名前を付けました。その命名が今に伝わっているのですね。
月の海とか湖とか
名前の一覧はWikipediaに載っていたのでそちらも見ていただきつつ、気になったところを挙げていきます。
海の名前で気になったのは、「賢者の海」「神酒の海」「静かの海」あたり。特に「神酒の海」はラテン語で「マーレ・ネクタリス」。厨二か。
「静かの海」なんて形容動詞を使っているあたりも厨二。
続いて湖では、「善良の湖」「忘却の湖」「時の湖」あたりがいい感じに厨二病。
沼と入江部門では、「腐敗の沼」「調和の入江」「栄光の入江」などがいいですね。
上で挙げたイタリアの物理学者、ジョバンニ・リッチョーリとフランチェスコ・グリマルディのふたりがこうした名前を付けたようですが、17世紀のイタリアといえばオペラが登場してきた頃ですから、オペラの題材として神話の世界が歌われていたのは不思議ではありません。
物理学者だからオペラを聞かないなんてことも考えにくいので、「神酒の海」など、彼らのネーミングに一役買っていることも考えられます。
当時ルネッサンス全盛期であったことも加味すれば、ソネット(十四行詩)の文学的表現とオペラの影響が悪魔合体して、こうしたネーミングが生まれたのも頷けます。
彼らからすれば、月が地球の気象に影響を与えるという考えの元に、現象や出来事の名前を付けただけなんだけど、後世になってその表現方法が厨二病的文学的と呼ばれるのはショックかも。ごめんね。
プロジェクト・セレーネ
冒頭で挙げた月面探査プロジェクトについて。
JAXAのSELENEは月の探査のために打ち上げられた衛星で、SELenological and ENgineering Explorerが正式名称。無理やり日本語にすれば月学的・工学的探査機です。和名での通称は「かぐや」。
セレーネはギリシャ神話に出てくる月の女神のことです。モンハンでは「月穿ちセレーネ」なんて弓がありました。
物理学、特に天文学だと顕著なのですが、神話や物語から名前を取ることが多いです。木星はローマ神話のユピテルが元ネタだったり、天王星はギリシャ神話のウラヌスが元ネタだったり。
セレーネの和名である「かぐや」とかまんまかぐや姫ですし。
かぐやは主衛星で、子衛星(サポートの衛星)は「おきな」と「おうな」。まんまおじいさんとおばあさん。
天文学者は間違いなくロマンチスト。……と思ったけど、名前は一般公募なのよね。
まとめ
JAXAの展示室に行って興奮したまま記事にしたので、だいぶ勢いだけで書いている部分がありますが、是非とも月の海の名前、見てみてください。
当時の物理学者がどういう思いで「静かの海」「神酒の海」と名付けたのか、その背景に想いを馳せるだけでも楽しめます。